アンカーボルトについてのQ&A
Q1:精度が低い田植え式とは?

 基礎のコンクリート打設が終わってから、型枠位置を基準に寸法を測りながらアンカーボルトをまるで田植えのように突き入れ、そのままコンクリートが硬化するまで放置します。突き入れるときにはコンクリートの中の鉄筋位置は確認できず、基礎幅の中央に入れようとしても鉄筋に当たることが多いので、アンカーボルトを前後左右に寄せることになります。これが土台をセットしたとき顕著に現われるので、手抜き工事と言われるのです。

Q2: アンカーボルトの高さが凸凹なのは?

 主に田植え式で生じる現象、田植え式はコンクリート硬化の状況を見てアンカーボルトを突き入れるのですが、打設直後は軟らかいのでアンカーボルト自体の重みで自沈し、逆に時間が経過すると硬くなり、手の力では無理なことからハンマーで叩くことになります。又、アンカーボルトの高低不揃いが気になって、コンクリート硬化中に無理やり調整すると、コンクリートとアンカーボルトの間には空隙が生じて定着不足が懸念されます。

Q3:脱型後、アンカーボルトの周囲にある窪みは何?

 設置精度が高いとされているテンプレート式やアンカーフレーム式の施工でも、台直しゼロ設置に自信がない業者は、コンクリートが硬化してから行うアンカーボルトの矯正を念頭におき、台直し作業がしやすいようにコンクリートを予め除いておく必要があります。そこでコンクリート打設前、アンカーボルトの周囲に発泡スチロールを巻き付けておきコンクリートの浸入を阻止します。以前は大根を使った現場経験者も多かったとか?

Q4:位置ずれ・曲がったアンカーボルトはなぜ?

 
田植え式は当然不良設置No1。鉄筋固定式は動く配筋の位置に追従し設置精度が低下します。テンプレート式では型枠と吊られているアンカーボルトが、コンクリート打設圧力によって位置ずれを生じます。アンカーフレーム式の場合は、捨てコンに設置したアングルの架台にアンカーボルトを据付けするので精度は改善されますが、組立て作業後の配筋工事における鉄筋との接触や、コンクリート打設圧力に影響されての不良設置もあります。

Q5:必要悪と言われる台直しとバカ孔とは?


 基礎工事において、アンカーボルトが位置ずれや曲がった場合は、アンカーボルトに無理やり力を加えたり加熱して矯正するか、土台やベースプレートのボルト孔を拡大しなければなりません。しかし、台直しによって材質が落ちたアンカーボルトや、バカ孔によってガタガタする土台やベースプレートの不良工事では、基礎と建物の緊結が不十分なため柱脚部の耐震強度は大きく低下し、大地震のとき建物倒壊の危険性が増大します。

Q6:「アンカーボルト台直しゼロは永遠のテーマ」?

 これは、基礎工事のとき現場担当者の口からよく出る諦めと言い訳の一言です。アンカーボルトの固定は基礎コンクリート打設工程での一発真剣勝負のため、責任者にとって極度に緊張する仕事です。しかし、現場によってアンカーボルト設置精度を高めることに最大限の努力をしている担当者と、努力不足で位置ずれ・曲がりが多く、まるで千鳥足のような設置でも仕方ないとする担当者に分類されます。やはり、後者のほうが多く言っている様な気がします。

Q7:建て主が基礎工事の耐震性を確かめる方法は?

 有ります。基礎工事が完了すると現場担当者は建て方をスムーズにする為の段取りとして、必ず基礎の上に基準墨と柱芯墨を出して基礎とアンカーボルトの精度を確認します。特にアンカーボルトの設置精度は、新築建物の耐震強度とこれからのあらゆる工程の施工精度を左右するものなので、施工業者に建築工事契約の条件として「アンカーボルト設置診断」(略称:Dubl診断)を作成、提出して貰うことでとても安心感が高まります。

Q8:基礎が無いE―ディフェンスの実大実験とは?

 450億円をかけて整備した世界最大級の実大三次元震動破壊実験施設。ところが、実験画像を良く見ると実験対象の実大構造物にはコンクリートの基礎が無く、震動台の上には基礎に代わるH鋼の架台。そこに通常のボルトとホールダウンボルトを使って緊結しています。実際の震災では、台直しや不良設置によるアンカーボルトの破断と基礎の破壊が大変多いので、現実と同じ構造で実験をしないと耐震性能評価は全く違ったものになると考えます。

Q9:ときどき報道される公共工事での不良設置とは?

 アンカーボルトの設置精度は建物強度に対して大きな影響を及ぼします。ところが現場では配筋計画の不備により鉄筋とアンカーボルトが干渉すると、何れか一方を切断したり、アンカーボルトを大きくずらして設置し、後で台直しをする施工業者がいます。これを見かねた工事関係者からの内部告発で表面化、やり直し工事や補強工事も実際にあります。通常このようなコンプライアンス違反の場合、施工業者は指名停止措置が科せられています。

Q10:公共工事での不良設置はなにが困る?

 例えば体育館の場合、地震や台風による災害が発生したときには、地域住民の緊急避難施設となり、復興まで大変役立つ堅固な建造物ですが、アンカーボルトの設置不良によっては耐震等級が1以下となり、人命を守るのに適さない危険な箱物となってしまいます。震災で住民が避難した体育館の天井材や壁材が余震によって落下するのは、建物の揺れが異常に大きくなるためで、柱脚部のアンカーボルトの設置状態がとても心配になります。   

Q11:ハブボルトとアンカーボルトが人命を左右する?

 ハブボルトはハブとタイヤホイール、アンカーボルトは基礎と建物を、それぞれ結合する重要な部品です。ハブボルトの場合、製造上の欠陥や整備不良があると金属疲労が発生、破断してタイヤ脱落事故を起こします。アンカーボルトの場合は、製造上よりも建築現場での不良設置を矯正する台直しが大きい問題なのです。無理な変形や加熱することで亀裂や材質低下が起こり強度を落とすので、矯正が多いと大地震のとき建物倒壊の恐れがあります。

Q12:アンカーボルトの設置精度はなぜ悪い?

 同じ製造物でありながら世界に誇る家電・自動車と比べ、建設業界でのアンカーボルトの設置精度が比較にならないほど低いのは周知のとおりです。理由として前者は総て工場内での製造ですが、後者の基礎工事は現地施工のために精度が著しく落ちるのです。アンカーボルトの位置ずれ・曲がりは当たり前、それらは矯正をしないと建物は建ちません。しかし、現場でのこの悪い常識は、早急に断ち切らないと耐震偽装問題の再現になるのでは?

Q13:工事単価の違い、基礎工事ではどこに?


 我が国での住宅工事単価は通常、1坪当たり40万円〜60万円程度。いずれの基礎工事も性能保証住宅基準で施工する訳ですから鉄筋の仕様・ピッチ・量、コンクリートの仕様・厚さ・量は規定どおりで、基礎工事の単価はほぼ均一化しています。そこで、「安い早い家」よりも工事単価が高い施工業者は、せめてアンカーボルトの"台直しゼロクラス"の施工精度で低価格の家と差別化を図らなければ、建て主からの理解が得られないと考えます。

Q14:"台直しゼロクラス"のアンカーボルト設置方法とは?

 特許「スイング式アンカーボルト工法」です。従来設置方式での最終位置決めは、コンクリートが硬化してから基礎上に基準墨を出し、その誤差を測定後、台直しにより無理やり矯正します。しかし当工法の場合、最下部にヒンジとアジャスタが備えてある「スイング式アンカーボルト」を用います。基礎コンクリート打設直後、専用鉛直器やトランシット・レベルを使って360°方向と高さ方向を微調整することで高い精度が確保されます。

Q15:プレカット時に孔加工、本当に土台セットは出来るの?

 
「スイング式アンカーボルト工法」の特徴はここにあります。手順は、@基礎・土台・柱・アンカーボルト明記の図面作成、A捨てコン又は、耐圧盤での正確な測量後のアンカー芯出しと設置、Bコンクリート打設直後の「スイング式アンカーボルト」の位置決め微調整と固定、C「アンカーボルト位置診断」による誤差の確認、Dデータをプレカット工場に送り許容寸法を超えたものだけを孔位置調整加工、Eこれで基礎天端に直接、土台セットができます。

Q16:悪い精度の原因、実は遣形依存症か?

 新築着工すると、誰もが何の疑いもなく始める遣形。工事仕様書では「正確堅固に設け、不時の衝撃による歪みには注意」との説明ですが、遣形の水杭・水貫は小断面の木材を使ったもので作業員や建機が触れただけでも容易く変形し、知らずに施工を進めると建物寸法は狂ってしまいます。現在は、高精度で使いやすい測量機が普及しており、遣形は不要です。不動である捨てコン上での地墨測定のほうが、確実に良い結果が得られています。

Q17:台直しの少なさで分かる業者の技術力?

 台直しとは、位置ずれや曲がったアンカーボルトを無理やり矯正して適正な位置に直すことですが、そのとき当ボルトには異常な力や高熱が加わり、強度は大きく低減します。ですから、台直しが無いことは最高レベルの施工なのですが、現実にはなかなかそのような現場は見当たりません。そこで、手っ取り早く発注予定の施工業者の精度に対する能力を知るには、現在施工中の基礎工事と「アンカーボルト位置診断」を直接見せてもらうことです。
                                                  [知的財産権所有: 株式会社 松本建築デザイン]
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